おいしさの伝統は、品質にこだわる北島の歴史です。
北島の創業は元禄9年(1696年)にさかのぼり、ほどなくして、現在の本店の位置する白山町の一角に数珠屋として店を開きました。享保年間(1716~1734年)には事業規模も拡大し、諸式屋として鍋島藩の御用商人にとりたてられました。幕末期には時勢の急激な変転により製菓業に専念することとし、南蛮菓子の製法を伝える佐賀伊勢屋町の横尾家にマルボーロの製法を習い、家業としてこれに取組みました。
マルボーロは、本来ポルトガル船員たちの保存食であったと伝えられており、現在よりやや小さくて固くクッキーのようなものだったといいます。明治の初めに八代・香月八郎と九代・香月安次郎の父子は、マルボーロをより食べやすく味わい深いものにするよう改良に改良を重ね、苦心の末に現在の北島の「丸芳露」を完成させました。北島の「丸芳露」は、小麦粉・砂糖・鶏卵の厳選された三つの材料を基本にその微妙な配合によって、柔らかでさっくりとした口溶けの良いおいしさを特徴としています。こうして明治・大正・昭和と時代を超え、ご好評をいただいております。
丸芳露とともに手がけてきた和菓子に加え、戦後は洋菓子にいたるまで幅広い品揃えにつとめました。とりわけ洋菓子については昭和35年より大谷琢亮氏に指導をうけました。大谷氏はまた新製品の開発に取組み、昭和43年にかけて8年間の長期にわたる努力の結果、丸芳露の姉妹品「花ぼうろ」を完成させました。氏の材料選びや菓子づくりに対する真摯な姿勢は、十代店主・香月善次の品質本意の厳格な経営方針とあいまって、北島の伝統となり現在にいたるまで受け継がれています。
当店では流行に振りまわされるような安易な商品開発をせず、長い間お客様に可愛がっていただける本格的な製品をつくりつづけることを最大の誇りとして、今後も菓子づくりに励んでまいります。